パルスビーム方式陽電子寿命測定装置(PALS装置) <薄膜材料内の原子空孔~ナノ空孔測定>

PALS-200A

  • 自動測定機能を標準装備した小型汎用PALS装置
  • 誰にでも簡単に操作できる解析ソフトを付属
  • 薄膜材料内の原子空孔~ナノ空孔を測定
  • パルスビーム方式で材料の表面~数μmを深さ可変で測定
  • 低ダメージ、非破壊測定
  • 5サンプル取り付け/全自動測定

概要

「PALS装置」は、薄膜材料内に存在する原子~ナノオーダーの空孔サイズ測定が可能な陽電子寿命測定(Positron Annihilation Lifetime Spectroscopy: PALS)装置です。「PALS装置」は、電子の反粒子である陽電子を物質中に打ち込み、陽電子が物質中の電子と消滅するまでの時間(寿命)を測定します。陽電子は物質中に原子の抜けた空孔があると、それに捕獲され、消滅寿命が空孔サイズに応じて長くなります。この性質を利用して、材料内の原子レベルの空孔欠陥の有無及び空孔サイズを知ることができます。

PALS測定法は古くから金属・半導体等の空孔欠陥分析に利用されていましたが、従来の測定法は放射性同位元素から得られる高エネルギー陽電子線(>100keV)をそのまま用いていたので、厚い試料の深部(~0.1mm)しか分析できませんでした。

近年、単色化した低エネルギー陽電子ビームによる深さ可変PALS測定法(パルスビーム法)が開発され、分離膜(RO膜)やガスバリア膜などの高分子機能膜、Low-k、High-k、 Cu配線などの材料表面近傍の特定の深さ領域(基板上の薄膜等)に限った空孔分析が可能になりました。しかし、その利用は陽電子発生に加速器を用いる大型施設に限られていました。

フジ・インバック(株)は産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門 極微欠陥評価研究グループと共同で、従来、加速器施設でしか行なうことのできなかった深さ可変PALS測定法を小型化し、通常の実験室に設置できるサイズの普及型装置を開発しました。

「PALS装置」は、陽電子線源として放射性同位元素Na-22を使用します。高効率減速材を用いて単色化した低速陽電子ビームは、チョッパー及びバンチャーを用いてパルス幅250ピコ秒以下に短パルス化して試料に入射します。試料に陽電子パルスが入射した時間と、試料中で陽電子が消滅した時に放出されるγ線の時間の差から陽電子寿命を測定します。陽電子ビームのエネルギーを制御することにより、試料への陽電子の打ち込み深さを変化させ、薄膜材料などの表面近傍の特定の深さの領域に含まれる空孔を選択的に測定することができます。

仕様と性能

  • 装置本体サイズ
        PALS-200A:2.0m(L)x0.7m(D)x1.5m(H)
  • 測定方法     :パルスビーム方式陽電子寿命測定法
  • 陽電子源     :Na-22密封線源(最大1GBq)
  • 陽電子ビームエネルギー
        PALS-200A:0.5~20keV(可変)
  • 分析深さ     :材料の表面~数μm
  • 測定空孔サイズ  :原子空孔(<0.3nm)~ナノ空孔(<10nm)
  • 時間分解能
        PALS-200A:<250ps
  • γ線計数率
        PALS-200A:>2000cps@0.5GBq
  • 測定時間     :1スペクトル<0.5hr

応用例

産業技術総合研究所・分析計測標準研究部門・X線陽電子計測研究グループ
URL:http://unit.aist.go.jp/riif/adcg/